特集
女子サッカー

Vol. 6 (December, 2000)

世界の女子サッカー選手

 女子サッカー選手と言っても、日本ではすぐに名前が浮かばない人が多いかもしれませんが、世界にはサッカーをしている有名な女性選手がいます。今回はその中の何人かを紹介してみたいと思います。

 まずは、女子サッカー王国アメリカ。シドニーオリンピックでは惜しくも敗れましたが、ワールドカップで優勝したアメリカ女子代表チームは、国内のちょっとしたスターです。かのマイケル・ジョーダンと女子サッカーのスター選手ミア・ハムが共演したCMを見て、「ミアの横にいる男の人は誰?」と聞いた少女も少なくなかったという話も聞きますから、彼女の人気ぶりは察するところでしょう。

 しかし、アメリカの女子サッカーを背負ってきた人といったら、なんといっても現在34歳のミッシェル・エーカーズです。1985年にアメリカ女子代表が最初に組織されたときからのメンバーで、1991年第一回女子ワールドカップの得点王でもある彼女は、国際試合に109出場し、92得点をあげています。この8月、代表からの引退を発表しましたが、彼女のすごいところは、この記録だけではありません。エーカースは1993年慢性疲労免疫不全症候群(以下CFIDS)と診断されています。この長い病名の病気を詳しく説明するのは控えますが、慢性的に極度な疲労感に悩まされ、ひどいときは、ベッドから起きることもできなくなるそうです。この病気と7年間付き合いながら、その間、何ヶ月か寝たきりの生活をしながら、彼女は世界で戦ってきたわけです。また、怪我にも終始つきまとわれ、肩の3回の手術を始め、腰、膝、そして顔面、痛めていない場所を探すほうが難しいくらい、まさに満身創痍で、選手生活を続けてきました。まさに、アスリート中のアスリートということができるでしょう。

 実際、ワールドカップ1999の決勝では、延長戦途中で交替、PK戦までベンチにいられず、そのまま競技場の医務室に倒れこみ、表彰式を迎えています。両脇を支えられながら競技場を去るエーカースの横顔は、それまでゲームに出ていたのが信じられないくらい疲れきった病人のものでした。

 エーカースは、自分のホームページで、CFIDSのコーナーを作り、病気に関する本や自分の体験談、治療の方法などを紹介し、CFIDSへの一般の理解を深めています。また、現在はサッカー・アウトリーチ・インターナショナルという団体を組織して、少年少女へのサッカークリニックや講演活動などを行っています。過去の栄光だけにとどまらず、選手としてのキャリアが終わった後も、社会貢献をしていこうという彼女の姿勢が伺われます。

 そして、もう一人。シドニーオリンピック優勝、第2回女子ワールドカップ優勝国ノルウェーのリンダ・メダレン。ノルウェー屈指のストライカーは、現在は代表のセンターバック。エーカースと並んで、世界の女子サッカーシーンには必ず名前が出てくる人物です。シドニーオリンピックは怪我で出場できませんでしたが、まだまだ現役の35歳。私が通訳をしていた日興證券でも長い間プレーしていました。サッカーに対しては、妥協を許さず、貪欲な姿勢を崩さないので、周囲に「わがまま」と見られてしまうこともありました。しかし、練習でも常に全力投球、自身の体調管理には細心の注意を払い、ワールドクラスを感じさせるプレーヤーでした。

 彼女は、ノルウェーでは警察官。有名人なので勤務中にサインを求められることもあったとか。この間テレビを見ていたら、彼女の顔がいきなり出てきました。世界のスポーツニュースだったのですが、よくよく聞いてみると、彼女の結婚発表で、それも相手は女性というニュース。その結婚発表はすなわち、彼女が同性愛者であることのカミングアウト(発表)だったのです。

 日本よりは、性の開放が進んでいる北欧とは言え、さすがに世論を呼んだらしく、当人のメダレンのみならず、ノルウェー女子サッカー界を巻き込んだ騒動となってしまったそうです。ちょうど、1999年の女子ワールドカップの時と時期を同じにしていたので、ノルウェーが不振(4位)だった理由にもされていました。
 何かと話題作りに事欠かないメダレンだったので、ノルウェーでも目だった存在だったのですが、「自分のありのままの姿を隠さずにいたかった。」とコメントしています。同性愛者団体からは歓迎のエール。これも世の中の目を覚ます一種の社会貢献ですね。

 もう一つ、女子サッカーが話題にならない日本でも、これだけはワイドショーでも取り上げられました。ヌードになったオーストラリア女子代表。資金稼ぎにやったという彼女達の心意気。私は買いたいと思います。結構きれいですよ。

 実際、その資金のおかげかオーストラリアのレベルが上がりました。選手の一人に話を聞いてみると、「始めはこわごわだったけど、最後は楽しめて撮影することができました。」とあっけらかんとしたものでした。

女子のスポーツ選手と言うと、実績よりもまず容姿が問われてしまう感のある日本スポーツ界。女子サッカーにかわいい選手がいればもっとメジャーになるのに、と言う人はいます。確かに一つかもしれません。オーストラリア代表もしかり。

 でも、世界でもトップの成績をおさめて、柔ちゃん、高橋尚子さんのような女子サッカー選手が日本から出てくれば、サッカーをする女の子も増えて、女子サッカーも日本に定着していくかなと、思います。時間はかかるだろうけど…。


Written By: 小林 美由紀, KOBAYASHI, Miyuki(JWS正会員)


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